モリ工業に長期投資するなら知っておきたい『財務安定性と収益構造』
モリ工業(5464)はステンレス鋼管を中心とした安定的な事業基盤と、高い自己資本比率を誇る優良企業です。長期投資を見据えるうえで、財務の健全性と収益構造、今後の成長性について最新の決算資料をもとに整理します。
ポイント要約
- 自己資本比率79.5%と高水準で、実質無借金経営(ネットD/Eレシオ-25.1%)
- 営業利益率11.7%、ROE7.5%と収益性もまずまず
- 配当利回り4.1〜4.8%、総還元性向53%で安定的な株主還元
- 原価率75.5%、販管費率12.8%で利益率は安定傾向
- 中計ではPBR1倍の達成を掲げており、収益向上とIR活動も強化中
2025年度決算(実績)
項目 | 数値 |
---|---|
売上高 | 461億円(前年比-3.7%) |
営業利益 | 53.9億円(-8.5%) |
経常利益 | 57.2億円(-10.5%) |
純利益 | 41.3億円(-8.7%) |
営業CF | 40.6億円 |
フリーCF | +2.1億円(投資CF▲38.4億円) |
現金等 | 159.3億円 |
2026年度業績予想
項目 | 予想 | 前年比 |
---|---|---|
売上高 | 458億円 | -0.7% |
営業利益 | 46億円 | -14.8% |
経常利益 | 48億円 | -16.1% |
純利益 | 34億円 | -17.6% |
EPS | 89.6円 | -16.3% |
減益要因の分析
2026年3月期は減収減益の見通しです。背景としては、建設関連需要の鈍化や販価下落、原材料費・エネルギーコストの上昇、ならびに生産設備の償却負担などが重なり、利益率が圧迫される構造となっています。
特に2025年1–3月期の営業利益率は9.8%まで低下し、販売数量の減少が影響しています。ただし、企業側はこれを一時的な調整局面と捉えており、中期経営計画では生産性向上・高付加価値製品へのシフト・設備効率改善による収益回復を見込んでいます。
したがって、今回の減益は構造的というよりは、主にコスト圧力と外部需要の一時的減速によるものと解釈できます。
ニッケル価格と業績の関係
モリ工業が扱うステンレス鋼管は、主要原料としてニッケルを使用しており、その価格変動が業績に大きな影響を与えます。ニッケル価格が上昇すれば材料コストが増す一方、販売価格へ適切に転嫁できれば利益は維持され、逆に転嫁が遅れれば利益を圧迫します。また、ニッケル価格が急落した場合も売価が下がりやすく、収益が不安定化します。
モリ工業は市況変動への対応力を持ちつつも、過去2年のニッケル価格下落局面では製品単価にも影響が及び、2023〜2024年の業績減速要因の一つとなりました。
その他の外的要因
- 建設・インフラ需要:足場材や配管向けの需要動向が売上に影響
- 為替:海外売上比率は低いものの、ニッケルなど原料の輸入価格に影響
- 鉄鋼業界全体の需給:価格競争・代替品動向も影響要素
長期投資家向け注目ポイント
- 国内売上比率95%で円高耐性あり
- 製造コスト上昇と販売単価下落の影響で利益はやや圧迫
- 建設仮設材や条鋼部門での販売数量減少が要因
- 中計では生産性向上、新規事業・海外展開強化を掲げる
- 資本コスト(WACC)7〜8%と想定し、ROE目標8.5%以上を掲げる
KPIとバリュエーション
分類 | 指標 | 数値 |
---|---|---|
収益性 | 営業利益率 | 11.7% |
ROE | 7.5% | |
財務健全性 | 自己資本比率 | 79.5% |
ネットD/Eレシオ | -25.1% | |
配当・還元 | 予想配当利回り | 4.16% |
総還元性向 | 53% | |
バリュエーション | PER | 9.7倍 |
PBR | 0.59倍 |
まとめ
モリ工業は、鉄鋼業界の中でも利益率が高く、財務的な健全性も際立つ企業です。景気の波や材料価格の変動に左右されやすい面はあるものの、堅実な事業基盤と高水準の自己資本によって、長期的な安定配当を支える力があります。今後の注目は、中計で掲げる収益性向上とPBR改善に向けた取り組みの進捗です。
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