いすゞ自動車に長期投資するなら知っておきたい『減益局面と先行投資のバランス』
いすゞ自動車は短期的な減益局面に入りつつも、中期成長計画に沿った積極的な成長投資を進めています。最新決算資料と中期計画をもとに、長期配当投資家向けの注目ポイントを整理します。
直近業績と見通し(IFRS移行含む)
決算期 | 売上高 | 営業利益 | 当期純利益 | EPS | 配当 | 為替想定 |
---|---|---|---|---|---|---|
2024年3月期 | 3兆3,867億円 | 2,931億円 | 1,764億円 | 229.92円 | 92円 | 145円 |
2025年3月期 | 3兆2,081億円 | 2,291億円 | 1,344億円 | 183.02円 | 92円 | 152円 |
2026年3月期(IFRS予想) | 3兆3,000億円 | 2,100億円 | 1,300億円 | 182.58円 | 92円 | 140円 |
減益要因の整理(2025→2026年)
2026年3月期は減益予想ですが、その背景は営業利益ベースで以下のように整理されています。
- 販売数量・構成変化:約▲770億円
- 為替円高影響(152円→140円):約▲425億円
- 米国関税影響:約▲160億円
- 資材コスト上昇:約▲235億円
- 研究開発費増加:約▲230億円
これらの減益要因は合計で約▲1,820億円規模に達しますが、一方でコスト改善・効率化などのプラス要素が約+1,600億円程度織り込まれており、結果として前期比約▲191億円減益の営業利益2,100億円を計画しています。
中期成長戦略(ISUZU Transformation – Growth to 2030)
- 2030年目標:売上高4兆円 / 営業利益3,600億円
- 国内:エルフミオ・小型BEVトラック投入
- 北米:現地生産・現地部品調達の拡大
- 新規事業:自動運転・コネクテッドサービス・カーボンニュートラル事業
- 2026年3月期設備投資:1,600億円(前年比+12%増)
財務・株主還元
- 自己資本比率:43.9%
- 有利子負債:約6,759億円
- 自社株買い:500億円(2025年度計画)
- 政策保有株縮減(29百万株売出し実施済)
- 配当方針:減益でも92円維持(配当性向約50%)
今期進捗確認で注目するKPI
- 為替:ドル円140円前提(円安進行なら上振れ余地)
- 北米・東南アジア販売台数:通年前年並み〜微増水準
- 関税コスト:年間160億円影響が想定通り収まるか
- 研究開発費:年間1,400億円前後の先行投資ペース維持
- 営業利益率:前年比9%台維持が目安
長期配当投資家向けまとめ
評価軸 | いすゞの状況 |
---|---|
配当安定性 | 減益局面でも配当維持を継続 |
成長投資 | 先行投資活発(新技術・海外展開強化) |
外部リスク | 関税・資材高・為替影響を織込み中 |
財務健全性 | 財務安定性は確保(自社株買いも実施) |
今後の注目 | 北米事業と新規事業の成長実現度合い |
減益局面を先行投資期間と位置付け、中期計画の着実な実行が進むいすゞ自動車。長期配当+成長を両立したい投資家にとって、安定的に仕込める好機ともいえます。
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