三菱ケミカルGに長期投資するなら知っておきたい『設備投資リスクと配当余力』【完全版】
三菱ケミカルグループ(MCG)は大規模なポートフォリオ改革の真っ只中にあり、利益は一時的に低迷する一方でキャッシュ創出力は維持されています。直近の決算データと田辺三菱製薬の譲渡発表を踏まえ、長期配当投資家向けに最新の投資判断ポイントを整理します。
配当政策と現在の利回り
- 配当方針:配当性向35%目安
- 現状配当:年間32円を維持(配当性向101.2%と利益超過状態)
- 配当利回り:約4.2%
- 総還元利回り:約8.6%(自社株買い含む)
- リーマン・コロナ期も含め減配を避けてきた実績あり
設備投資の現状と今後の動向
- 2024年度の設備投資額:3,250億円(事業投資含む)
- 営業キャッシュフロー:5,528億円 → 強力なキャッシュ創出力
- 投資キャッシュフロー:▲2,754億円
- フリーキャッシュフローは黒字を維持
- 今後5年間(2025-2029年度)はCFの約80%を成長投資に充当予定
田辺三菱製薬譲渡による影響
- 譲渡金額:約5,100億円(2026年3月期第2四半期予定)
- 譲渡益:約950億円(税前)計上予定
- 譲渡資金は成長投資・負債返済・株主還元へ活用
- 財務体質の早期改善と成長余力の拡大が期待
事業ポートフォリオ改革の進展
- 石化・炭素・コークス・アンモニア事業から撤退・縮小を推進
- 高付加価値樹脂、半導体材料、医薬・バイオ、炭素繊維複合材へ集中投資
- 田辺三菱製薬は売却予定に変更(完全子会社化済→売却へ)
- 構造改革費用や減損損失は今後も一定発生見込み
財務状況とリスク要素
- 有利子負債残高:高水準も削減進行中
- 自己資本比率:29.5%
- ネットD/Eレシオ:1.06倍(負債依存は依然高め)
- 現預金残高:3,261億円(流動性は十分確保)
- ROE:2.6%(利益水準は低迷中)
- 海外売上高比率:50.1%
要注意ポイント
- 構造改革コストがしばらく利益を圧迫する可能性
- 利益回復が遅れれば配当性向は高止まりリスク
- 譲渡後の資本政策次第で今後の配当余力が変動
長期配当投資家向けまとめ
評価軸 | 三菱ケミカルGの状況 |
---|---|
配当安定性 | 減配は極力避ける方針(配当性向は利益依存) |
設備投資 | 大型投資継続中(構造改革費用含む) |
財務負担 | 負債水準は高水準だが、譲渡資金で改善余地拡大 |
今後の注目 | 収益力回復とROIC改善、成長投資成果の実現 |
再建型高配当株として、構造改革の成否がカギを握ります。減配回避の方針を維持しつつ、田辺三菱製薬の譲渡資金を活用して成長投資・負債削減が順調に進めば、中長期的に配当余力の安定が期待できます。
【ご注意事項】
本記事は特定銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。
株式投資は元本保証がなく、株価の変動等により損失が生じるリスクがあります。
投資判断は必ずご自身の責任において行ってください。
また、記載内容は作成時点の情報に基づいており、将来を保証するものではありません。
最新の情報や詳細は、各企業の公式IR資料などをご確認ください。